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「融資を受けないこと」は、「会社を成長させないこと」

  • 2024年10月25日
  • 読了時間: 5分

世間一般的には、

「借金=悪いもの」

「利息=払わないほうがいいもの」

「借金をする人=計画的にお金を使うことができない人」

だと考えられています。


 個人の立場で借金を避けるのは、たしかに正しい。

しかし、会社経営は違います。


「借金=成長のための資金」

「利息=会社を守るための保険料」

「借金をする人=事業計画を立てられる人」だと私は考えています。


・「借金=成長のための資金」


「融資を受けないこと」は、「会社を成長させないこと」と同じです。

事業を継続していると、まとまった資金が必要になる場面に遭遇します。

新卒採用にも、社員教育にも、商品開発にも、新規事業にも、設備投資にも、お金がかかります。


 中小企業は資金力が弱いため、そのすべてを自己資金(自社が保有している資金)でまかなうのは、現実的ではありません。

「銀行から借入れをしてまで会社を成長させたくない。現状のままでいい」という経営者もいます。


 しかし、会社が成長しなければ、質の高いサービスをお客様に提供することも、従業員の待遇を向上させることも不可能です。


組織が成長を止めて硬直化した状態では、

「役職や権限が固定化して、若手社員が離職する(昇進・昇格の機会が与えられないため)」

「時代の変化に対応できない」

「既存顧客・既存事業だけでは右肩下がりになる」

などの弊害が生じて、現状維持さえ難しくなります。


 無借金にこだわると、ベンチャー精神が失われ、社内の活力が急速に失われていきます。

 現在は市場の変化するスピードが速く、会社が生き残るには時代に合った商品やサービスの提供が必要です。


 手元に資金があれば、いつビジネスチャンスがきても素早く対応できます。しかし、手元に資金がなければ、大きな機会損失の可能性があります。


 計画的に借入れをして、「お客様を増やすこと」「人材を育てること」「インフラを整えること」にお金を投資する。


 現実的に返済できる範囲で借入れをすれば、自己資金が少なくても、安定的、継続的に会社を成長させることができます。


・「利息=会社を守るための保険料」


「利息を払いたくない」という理由で借入れを拒む経営者もいますが、「利息を払って、現預金を増やす」というスタンスが必要です。


「金融機関に支払う利息は、保険会社に支払う保険料と同じ」

「金融機関から受け取る借入金は、保険会社から受け取る保険料と同じ」

と解釈すべきです。


 利息を払って借入れをして、現預金を増やしておく。そうすれば、非常事態にも対処できます。


 私が代表を務める株式会社武蔵野は、ダスキン事業と全国の中小企業にコンサルティングを行う経営サポート事業を柱とした会社です。


 わが社がリーマンショック、東日本大震災、パンデミック(新型コロナウイルス感染症の蔓延)にもまったく動じなかったのは、平常時から計画的に借入れをして現預を持って万が一に備えていたからです。


「利息は月々の保険料であり、借入金は保険料である」

「保険料は個人の備えであり、借入金は会社の備えである」

という概念を理解できれば、「利息は無駄なお金ではない」ことがわかるはずです。

 借入金の金利が高いとしたら、それは会社の信用力が低く(=格付けが低く)、貸倒リスクがあるからです。


「財務状況を改善してキャッシュフローを良くする」

「貸借対照表(B/S)ベースの経営にシフトする」

「長期の経営計画、事業計画を明確にする」

「資金繰り表を作成し、現実的な支払い計画を立てる」

「業績を上げて連続黒字を実現する」

といった経営努力を重ねれば、信用力を上げる(=金利を下げる)ことも可能です。


・「借金をする人=事業計画を立てる」


金融機関は「長期事業計画」「資金計画」「事業計画」を見て、現在の自己資金も含め定量と定性の両面から会社の実力と将来性を判断し、「融資をするか、しないか」を決めています。


 つまり、融資を受けられるのは、金融機関から「計画を立てられる人」だと認められたからです。

事業計画を立てるには、「損益計算書(P/L)」「貸借対照表(B/S)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」の数字を読み解く力が必要です。


 自己資金があるからといって、倒産しないわけではない。

「無借金経営」とは企業に有利子負債が一切ない状態を指します。


 有利子負債とは、金融機関からの借入金のように「返済をする際に利息(利子)をつけなくてはいけない借入れ」のことです。


 借入額が大きいほど、支払う利息は大きくなります。そして、有利子負債が多くなるほど、利息の返済額が負担になります。


 「借入れがなければ利息の負担はないし、返済の圧力に悩まされることもない。だから無借金経営を目指す」という経営者もいます。


 融資(借金)に対する考え方は経営者によって違うので、無借金経営を目指してもいい。しかし、「無借金であれば会社は倒産しない」と考えているとしたら、キャッシュフロー(お金の流れ)に対する認識が甘すぎます。


 倒産は、「手元資金がなくなるとき」に起こります。


 無借金でも売掛金、支払手形、在庫の管理ができなければ、倒産のリスクが高くなります。


 ですが、利益を出すため、事業を拡大するため、社員に夢を与えるためであれば、積極的に借入れをすべきです。




                            コンサルタント小山昇

    「1%の社長しか知らない銀行とお金の話」(あさ出版)より抜粋

 

 
 
 

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