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やりがい×働きやすさ=プラチナ企業 御社はランク入り? 

  • 2024年6月7日
  • 読了時間: 4分

 頑張れば豊かになれる――。その希望がモーレツ企業で昼夜問わず働く社員の「働きがい」だった。この昭和的発想は平成の世に変質。「働きやすさ」を尊重するホワイト企業に脚光が当たる。その副作用か、企業と社員の関係は淡泊になってきた。


 令和の現在、働きがいと働きやすさを両立した「プラチナ」への進化が求められている。


 「焼肉きんぐ」など約700店の飲食店を運営する物語コーポレーションは、働きがいを軸に組織を発展させてきた。


 同社は働きがいが高い一方、働きやすさは低い「モーレツ」に分類される。日本経済新聞社が国内最大級の会社情報の口コミサイトにある社員らの投稿を分析し、上場企業約2300社の労働環境と業績を調べた結果だ。


 2023年7月、物語コーポレーションは社員の成長を促す仕組みを導入。店長など役職に必要なスキルを細かく分類して、熟達度を可視化した。能力に応じた役職や報酬で社員に報い、仕事のやりがいを醸成する。


 横浜任執行役員は「意欲のある社員が活躍できるよう、一人ひとりが自分の力を発揮できる環境をつくっていく」と話す。


 仕事のモチベーション向上を重視するモーレツと、安心して快適に働ける職場づくりに注力するホワイト。どちらも掲げる理念に誤りはない。


 口コミサイトの分析でも働きがいに関する項目ではモーレツに対する好意的な意見が散見された。


 例えば、モーレツ企業には「若手のチャンスの多さ」「挑戦を奨励する風土」などの長所がある。しかし働きやすさに関する項目は「残業」や「過労」などワーク・ライフ・バランスの悪さを示す言葉が上位に並んだ。


 今日の企業が目指すべき方向はこの調査から透けて見える。働きがいを持って仕事に臨む社員を組織に定着させる働きやすさの掛け算こそが持続的な成長を実現する。


 モーレツとホワイトは「移行期」。それぞれの不足を補い、プラチナへの脱皮を果たす必要がある。


 創業26年で連結売上高が1兆円を突破するなど急成長を遂げたオープンハウスグループもプラチナを目指す一社だ。


 成長の原動力はモーレツな社風だ。木曜日の全社朝礼は社長も出席し、各事業部から実績が報告される。会社目標を全社員に共有することで経営への参画意識を植え付ける。


 人事部の山根正義課長は「やる気があり、結果を出した人が評価される」と表現する。


「結婚や出産を見据え、20代で管理職になりたかった。


男女関係なく平等に評価されるので良い環境だ」。10年に入社した小山内悠子さん(36)はこう話す。実際、27歳で課長に就任した。正しい実力主義は社員の達成感を高め、企業成長のドライバーとなり得る。


 ただ、オープンハウスグループの平均勤続年数は23年9月期で男性3.99年、女性2.55年で、日本全体の12.3年(厚生労働省、22年の男女計)と比べて大変短い。


 働きやすさとのバランス調整が目下の課題だ。近年では最短2時間からの時短勤務制度の実施や、生理休暇取得の促進など働きやすさを高める制度を充実させている。


 人材コンサルティングの米コーン・フェリーがグローバル企業585社(うち日本企業85社)を対象に実施した23年度の調査では「働きがいを感じる」割合は世界平均で71%だった。日本は12ポイント低い59%となった。


 働きがいと働きやすさの両立は難しい。プラチナ化は一部の先進的な企業にとどまる。ただ、コーン・フェリー担当者は「日本企業の『働きがい』は連続的な低下傾向にあったが、改善の兆しがみられる」と分析する。


 社員が自ら動き、成長できる職場環境づくりは企業の永続的な成長に不可欠だ。モーレツとホワイトからの進化が日本企業の「伸びしろ」と捉えれば、見える景色も変わってくる。

 

調査概要 

日本経済新聞は企業分析を手掛けるクレジット・プライシング・コーポレーション(CPC、東京・中央)の協力を得て、「オープンワーク」に書き込まれた社員の口コミなどから上場企業を「働きやすさ」と「働きがい」の2軸で類型化。業績との連動などを分析した。働きやすさが高く働きがいが低い企業群を「ホワイト」、その逆を「モーレツ」と定義。2軸とも高評価な企業群は「プラチナ」としている。「働きがい・成長」「女性の働きやすさ」「ワーク・ライフ・バランス」の項目への書き込み件数が累計で20件以上ある上場企業、約2300社が調査対象となった。

CPCが人工知能(AI)モデルを使って口コミの文章を判定。ポジティブ(前向き)なのか、ネガティブ(後ろ向き)なのかを分類し、スコア化した。企業群ごとに、働きがいと働きやすさのスコアを掛け合わせた値をベースに順位付けした。

 
 
 

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