人手不足倒産2.1倍で最多 中小、時間外労働規制に懸念
- 2024年7月26日
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帝国データバンクは5日、人手不足が原因の倒産件数が2023年度(23年4月〜24年3月)に前年度比2.1倍の313件に達したと発表した。集計を始めた13年度以来過去最高件数となった。
時間外労働の上限規制が24年4月に始まり、さらなる人手不足が懸念されている。
帝国データが倒産(法的整理のみ)となった企業のうち、従業員の離職や採用難などで人手を確保できなかったことが要因となった件数を集計した。
特に24年3月の倒産件数が多く、前年同月比2.3倍の49件だった。集計開始以来単月ベースで過去最高件数となった。
人手不足で受注量に制限が出ることなどで収益が一段と悪化し、年度末に事業整理を迫られる企業が増えたとみられる。
業種別でみると時間外労働の上限規制が4月に始まった建設が前年度比2.3倍の94件、物流が1.8倍の46件と高い伸び率だった。
帝国データによると、木造建築を手掛けるインスパイア(山口県防府市)は3月8日に山口地裁から破産手続き開始決定を受けた。
業況拡大に人員確保のペースが追いつかず、外注費の増加などが重荷となり資金繰りが逼迫。債務超過に陥り事業を停止していた。
規模でみると従業員数10人未満の倒産が全体の74%を占めた。10〜50人未満が20%で、50人以上は6%にとどまった。
業歴でみても創業または設立から30年以上の企業が38%を占め最多だった。なかには100年を超える老舗企業も含まれたという。
帝国データバンクの旭海太郎副主任は「従業員数の少ない零細企業はデジタル化への対応遅れなどもあり人材獲得力で劣後している可能性がある。
今後も人手不足を要因とした倒産は一段と増える懸念がある」と指摘する。
1〜6月の人手不足倒産、前年比7割増 過去最多ペース
帝国データバンクは4日、人手不足が原因の倒産件数が2024年上半期(1〜6月)に前年同期比7割増の182件だったと発表した。
年間ベースで過去最多だった23年(260件)を上回る勢いで推移している。4月に時間外労働規制が適用された物流や建設業界を中心に、働き手を確保しづらい小規模事業者の倒産が目立つ。
帝国データが倒産(法的整理のみ)となった企業のうち、従業員の離職や採用難など労働力不足が要因となった件数を集計した。
1〜6月は182件と23年1〜6月(110件)に比べ65%増えた。
24年3月は年度末の事業整理などが増えて49件と、13年度の集計開始以来単月ベースで過去最高件数となった。
4〜6月の合計も87件と前年同期より約3割多く、倒産ペースは落ちなかった。創業または設立から30年以上の企業は全体の36%にのぼった。
業種別でみると時間外労働の上限規制が4月に始まった建設が前年同期比18%増の53件、物流が1.8倍の27件といずれも上半期としては最も多かった。
帝国データバンクによると、建築工事会社の豊工務店(京都市)は5月31日に京都地裁の破産手続き開始決定を受けた。公共工事の減少に加え、近年は大工職人の廃業増加で外注費用が膨らむなど資金繰りが悪化していた。
規模でみると従業員数10人未満の倒産が全体の79%を占めた。10〜50人未満が14%で、50人以上は7%にとどまった。
総務省が実施した23年の労働力調査では、転職希望者が初めて1000万人を超えた。人材の流動性がますます高まる中、退職者の穴を埋められず、事業継続が困難になる中小零細企業が増加傾向にあるという。
一方で人手不足を感じている企業の割合は6月に正社員が50.1%、非正社員が28.2%と、4月からそれぞれ0.9ポイント、1.9ポイント改善した。各社は賃上げや人事制度の見直しなどで働き手の確保に動くほか、業務の自動化を進めることで人手不足をカバーしている。
帝国データバンクの旭海太郎副主任は「物流や建設など人手不足が深刻な業界でも、SNS活用やオフィス環境の改善を通じて人材を獲得している企業は少なくない」と指摘する。
人手不足を背景に人件費の上昇も続いており、人材確保への取り組みの成否が企業の持続性を左右しそうだ。
分析・考察
労働供給制約社会の脅威をまざまざと見せつけるデータです。
人口減少に伴う働き手不足は今後、企業にとって一番の経営リスクになるかもしれません。 2023年の労働力人口(平均)は6925万人に上る一方、非労働力人口も4084万人に上ります。
病気や高齢などの理由で働けない方もこの中にいますが、何らかの事情で働くことを諦めてしまった方も多数含みます。
企業は今後、非労働力人口の掘り起こしに目を向けるべきでしょう。例えば短時間正社員や週休3日の導入です。
週5日のフルタイム勤務が難しいために能力はあっても就労を諦めている層が少なくありません。多様な働き方の導入は人手不足解消のカギになるかもしれません。
2024年7月4日
記事編集 社長
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