建設現場の監督が不足 東急系大手「未経験・中卒」採用
- 7月18日
- 読了時間: 4分

建設業界は人手不足状態の終わりが見えない状況だ。少子化の影響で施工を担う若い現場作業員が足りない――。一般的にはこう理解されているが、実は、現場監督である「施工管理者」の不足も危機的状況だ。下請けが多い現場作業員に対し、施工管理者は建設会社に雇われた技術者であることが多く、相対的に好待遇であるにもかかわらずだ。
国内各地で再開発事業や工場建設などが行われており、工事需要が高い傾向が続いている。施工管理者は施工図面や計画書に基づき、計画通りに工事が進むように複数の作業員を指示して現場をまとめる。
2024年4月に時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、多くの現場では規制に抵触しないよう、従来は1人の施工管理者が手掛けていた作業を2人で分担するなどの労働時間削減策が講じられている。
30代の施工管理者が数えるほど
しかし、一部の建設会社では依然として、夕方に作業を終えた現場作業員が帰った後も、施工管理者が夜遅くまで残業して書類業務をこなすという働き方が残っている。
施工管理者のサービス残業が常態化し、規制を超えた分の残業代を払ってもらえず、結果的に給料が下がった例もある。長時間労働という点では、現場作業員より施工管理者のほうが深刻と言える。
こうした劣悪な労働環境に嫌気がさす技術者が多い。特に残業規制が適用されて以降、施工管理の経験を積んだ技術者が建設業界外に転職する流れが加速している。
東証プライム上場のある専門工事会社では、30代の施工管理者が数える程度しか在籍していない状況という。
不動産会社での発注業務や、事業会社での不動産資産管理などが人気の転職先となっている。
人材流出の加速もあって建設業界では施工管理者を中心に、転職人材の受け入れニーズが高い状況が続く。
リクルートが公表した24年度の転職市場に関する報告書によると、施工管理者を含む建設・不動産業の24年の求人数は5年前の約3倍に達した。
人材の奪い合いが激しさを増す中、地方のゼネコンや中小建設会社では選考のハードルを下げ、学歴不問としたり、未経験者や文系の大学卒業者も応募可としたりするなど技術者の採用条件を緩和する動きが強まっている。これまでは経験者か、大学で土木工学や建築学などを学んだ者が大半だった。
さらに、大手の建設会社の間でも学歴不問かつ未経験者の採用に踏み切る例が出てきた。これまでは考えられなかった動きだ。
「学歴にこだわっていられない」
例えば、東急グループで東証プライムに上場する世紀東急工業。社員数は約1000人に達する道路舗装工事の大手だ。4月中旬にリクルートエージェントの転職サイトに掲載されていた同社の正社員募集の求人では、エリア限定の施工管理者の学歴要件を「中学校卒業以上」と明記していた。加えて、「未経験でも(応募)可」となっていた。最終更新日は25年2月だった。
「募集(時の)面談で使える人材と分かれば、学歴にこだわってはいられないのが実情」と世紀東急工業総務部の担当者は語る。
担当者によれば、この条件によるエリア職の中途採用で既に数人が入社している。人手不足を解消して施工体制を構築するための施策の一つに位置付けているという。中卒エリア職として入社後、高卒認定を取れば総合職への転換も可能だ。
現場のまとめ役である施工管理者を確保できなければ、せっかく案件を受注できても、工事を進めることが困難になる。施工管理者の確保は死活問題と言える。同社は道路舗装工事を専門に手掛けており、ビルやマンションなど様々な工事を手掛けるゼネコンよりも未経験者が業務に取り組みやすいことも、未経験者採用を進める背景にあるようだ。
中高年の転職者受け入れも活発になっている。特に「1級土木施工管理技士」などの有資格者は引き合いが強い。
リクルートによると、同資格を持つ50歳前後の転職希望者で、複数の派遣会社を渡り歩いて「広く浅く」の経歴しかないにもかかわらず、ある建設会社が年収約750万円と「破格の」オファーを出した例があった。仕事量に対して施工管理者の人数が絶対的に不足する中、有資格者というだけで引っ張りだこというわけだ。
インディードリクルートパートナーズの平野竜太郎氏は今後について、「天と地がひっくり返ったりしない限り、圧倒的な人手不足感が続くのではないか」と予想する。人手不足の解消に向けては、週休2日の基準化といった民間工事での働き方改革の徹底に加えて、未経験者を採用した企業に教育費を大幅に補助するなど、国主導による抜本的な対策が必要だと指摘する。
投稿責任 社長




コメント