投資用マンション曲がり角? 利回り低下、金利上昇注意
- 2024年2月23日
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ここ数年、東京都区部のマンション価格が高騰しているという話題に注目が集まっています。
住むための「実需」の物件だけでなく、投資用区分所有マンションも同様に価格が上昇してきました。
しかし、2023年に入ってから慎重な姿勢を見せる投資家が増えてきた感があります。
筆者のもとにも、そろそろ都内の投資用マンションを売却したい、売却すべきかどうかという相談が増えてきています。
価格は頭打ち、賃料は上昇
まずは、マンション価格と賃料水準の推移について見てみましょう。次のグラフは、公益財団法人東日本不動産流通機構が発表している東京23区内の中古マンション売買平均単価とマンション賃料平均単価のデータを使用し、
2017年3月から23年9月までをグラフ化したものです。
中古マンション価格は17年3月以降、上昇傾向を示していますが、20年7月以降はより上昇傾向が強くなりました。19年ごろは、そろそろ都区部の中古マンション価格の上昇も限界だろうといわれていた時期でしたが、
新型コロナウイルス禍の下で経済停滞を払拭するために行われたマネーストックの増加(さらなる金融緩和)が一段と不動産価格の上昇をもたらしたのではないかと筆者は考えています。
そして23年に入ると価格上昇の勢いがやや落ちてきました。
一方、賃料をみると、17年から20年3月ころまではマンション価格と同様の上昇を見せていましたが、その後は上昇率が弱くなっています。そして、23年以降はふたたび上昇しています。賃料が今年になってから上昇したのは、賃料の変化は価格の変化より遅れて発生するという性質があるからではないかと思われます。
表面利回り、コロナ禍以降に下落
価格と賃料が分かっていますので、「賃料×12か月÷価格」で表面利回りが算出できます。これをグラフ化してみると面白いことが分かります。
17年3月から20年6月までは表面利回りはおおむね5%程度で横ばいでしたが、その後、一気に低下しています。
物件価格の上昇が主な要因です。そして23年に入るとおおむね4%程度で横ばい化しています。そろそろ投資用マンションを売ろうかと考える方は、この利回り低下(価格上昇)局面がそろそろ終わり、物件の価格が下がり始めるのではないかと考えている可能性があります。
投資用マンションは金利に左右されやすい
このような表面利回りの状況に加え、投資家は金利動向にも注目しています。投資用マンションを取得するためのローンは、実需目的の住宅ローンと違って金利が高めですし、市場金利の動向に左右されやすい性質があります。
表面利回りは年間賃料収入を使って計算していますが、実際に投資する場合は、賃料収入から賃貸運営コスト(管理費、修繕費、入居募集費、公租公課など)が差し引かれ、そのうえで、金利支払いと元本返済が発生するため、利ザヤは思ったほど大きくはなりません。
表面利回りが高く、ローン金利が低ければ、利ザヤは大きくなりますが、表面利回りが4%程度に下がってきた状況でローン金利が上昇すれば、投資のうまみが減ってしまい投資したいと考える人が減る、そして価格が下がるという予測をしている方が少しずつ増えているということなのでしょう。
金融緩和政策の動向にも注目
投資家心理が慎重姿勢になりつつあるのは、表面利回りが低下し、横ばい傾向になっていることに加え、金利上昇リスクで投資妙味が下がりつつあることが背景のようです。しかし、投資用マンション価格がこれ以上は上がらない、近いうちに値下がりするとは言い切れない面もあります。
19年ごろは「これ以上、マンション価格は上がらない。上限に到達している」といった意見が多かったのですが、コロナ下で市場のお金を潤沢にするという経済政策によって、誰もが予想しなかった「さらなる価格上昇」が実現したという事実がつい最近あったのです。
投資をするということは、市場動向だけでなく、経済政策の動向にも目を光らせる必要があるということです。
田中歩(たなか・あゆみ)
住宅は省エネ基本に 住宅ローン減税変更、補助金も注目
2024年1月以降に建築確認を受ける新築住宅について、省エネ基準に適合していない場合には住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)が使えなくなります。すでに新築住宅として建てられる8割以上は省エネ基準を満たしていますが、これをきっかけに来年以降の新築住宅は省エネ基準を満たすものがさらに多くなることが予想されます。
既存住宅(中古住宅)については、住宅ローン控除制度に変更はなく省エネ基準を満たさなくても控除を利用できますが、省エネ改修対象の補助金制度の継続が予想されます。住宅ローン控除や補助金制度など、国は全体として住宅の省エネ化に大きくかじを切っています。これから住宅を購入しようという方は十分に理解しておく必要があります。
省エネ基準に達しなければ住宅ローン減税なし
住宅ローン控除は、一定の条件のもとで、個人が住宅ローンを利用して住宅を新築・取得・増改築などをおこなった場合、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税と住民税から控除するという仕組みです。控除できる期間は、新築住宅で最大13年、既存住宅で最大10年です。
24年からは制度が変わります。中でも大きく変わるのは、「新築住宅・買い取り再販」の「その他の住宅」という部分です。
「その他の住宅」とは、省エネ基準に適合しない住宅のこと。24年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で「その他の住宅」に該当する場合、住宅ローン控除が受けられないということになります。
ただし、救済措置として、23年までに建築確認を受けた新築住宅は借入限度額2000万円、控除期間10年の住宅ローン控除が受けられます。
また、省エネ基準を満たす新築住宅は、控除額の上限が引き下げられます。
25年4月に改正建築物省エネ法が施行され、原則全ての新築住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。これより前倒しで、省エネ基準に適合しない新築住宅について住宅ローン控除の適用から外すということなので、国は脱炭素社会の実現のために本腰を入れてきたということでしょう。
中古住宅は補助金で省エネ化へ誘導
既存住宅については従来通りのルールとなりますので、省エネ基準に適合していない既存住宅でも住宅ローン控除は使えます。脱炭素社会の実現という目的からすると逆行しているように思えますが、新築住宅は資材の高騰などで価格が上昇しており、手が届きにくくなっていること、既存住宅を購入する方が従来以上に増えていることなどから、一気にルールを変えることができなかったのだと思います。
また「住宅をつくっては壊す」ことによる資源の消費と産業廃棄物の発生を抑制し、資源の循環利用の実現などで環境への負荷を低減させ、ストック型社会への転換を図りたいという背景もあります。そこで国は、既存住宅について省エネ改修の補助をすることで、温暖化ガスの排出削減を目指しています。
例えば長期優良住宅化リフォーム推進事業を使えば、住宅の一定の性能向上が認められる増改築(評価基準型)であれば、一戸あたり補助限度額は100万円で、補助対象となる工事費合計の3分の1までの額が補助されます。
現在、評価基準型の交付申請は締め切りとなっていますが、国土交通省の24年度予算要求では継続を盛り込んでいます。一般的な予算成立までの流れで考えれば、今年の12月下旬ころに政府案の閣議決定、24年1月に政府原案が国会に提出され、3月に衆参両院で可決すれば次年度の予算成立となりますから、4月の政策実行が期待されます。
今後の省エネに関する補助金動向については要チェックだと思います。
断熱性と気密性がポイントに
住宅の省エネ性能は断熱性と気密性がポイントになるといわれます。外気の冷たさや暑さを遮断するために、室内の適温となっている空気をどうやってその場にとどめるかが鍵となりますが、真冬であれば、断熱性はダウンジャケットを着ること、気密性はダウンジャケットのファスナーを上まできちんと閉めることと考えると分かりやすいでしょう。
これまでの日本の住宅は、例えるなら寒空にTシャツを着て、カイロを体に貼って過ごしているようなものだと言われてきました。これでは、カイロ、つまり暖房の費用がずっとかかり続けますし、エネルギーロスが高すぎるということになるわけです。
住宅ローン控除のルール変更に伴い、来年以降の新築住宅は、断熱性と気密性が一定基準以上のものが主流となるでしょう。改正建築物省エネ法では、新築住宅はたとえば外壁の断熱材の厚さを一定以上にしたり窓を複層ガラスにしたりする必要があります。
また、脱炭素社会の実現という観点から、中古住宅についても、省エネ改修を推進する政策が継続されると思います。
田中歩(たなか・あゆみ)
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