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新築戸建て価格、東京23区で0.7%高 立地で二極化も  

  • 2024年6月28日
  • 読了時間: 5分

 不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)がまとめた5月の小規模戸建て住宅の平均希望売り出し価格は東京23区が前月比0.7%高い1戸7115万円だった。


 上昇は2カ月ぶり。新宿区や世田谷区で高額物件が出て23区は上昇したものの、練馬区や葛飾区などで価格調整もあり、下落した区のほうが多かった。立地によって価格の二極化傾向がみられる。


 調査は敷地面積50平方メートル以上100平方メートル未満の新築木造一戸建て(土地含む)について、最寄りの駅まで徒歩30分以内またはバスで20分以内の物件を対象とした。


 首都圏は0.9%高の5341万円と4カ月連続で上昇した。


 東京都は1.1%高の6395万円。神奈川県は2.9%高の4974万円だった。特に横浜市は3.1%高の5055万円と調査を開始した2014年4月以降で過去最高価格となった。立地のいいエリアで高額物件がでたことが影響した。


 近畿圏の平均価格は0.8%安の3921万円と、3カ月連続上昇から反落した。大阪府は0.5%安の3871万円。


 愛知県は1.5%高の3756万円と反転上昇した。


 市場では住宅価格の上昇で、実需層の買い控えが起きているとの見方がある。販売量を増やそうとハウスメーカーの価格調整がみられる。


 一方で、主要駅の近くなど立地のよい場所では高額物件が出ている。


 東京カンテイの藤谷有希研究員は「立地の良しあしで戸建ても価格の二極化が進んでいる」と指摘する。




住宅価格、駅からの距離・築年数の影響は

20代からのマイホーム考               

 住宅価格を決める要素には様々なものがあるといわれています。よく聞く要素には、最寄り駅からの距離、都心部へのアクセスの良さ、築年数などがあります。


 時代の変化によって、これらの要素が住宅価格にもたらす影響度も変化することがあります。今回は、戸建て住宅とマンションでどのような違いがあるか、新型コロナウイルス禍前後で資材価格が高騰したり、働き方が変化したりしたことにより、住宅価格を決める要素に変化があったか否かについて調べてみました。

調査方法

 2019年1月から24年4月までの東京駅から半径50km以内の1都3県にある戸建て住宅と、マンションの成約事例を用いて分析を行いました。

 

 戸建て住宅の成約事例は、00年6月に改正された最新の耐震基準を満たす物件となるよう築24年以内としています。

 また、建物延べ床面積は50平方メートルから200平方メートル、土地が接する道路幅員を15㍍以内とし、一般的と思われる住宅エリアの戸建て住宅を対象としました(総データ数:4万1,936件)。

 

 一方、中古マンションは、築40年以内、専有面積50平方メートルから200平方メートル以内としています(総データ数:12万401件)。

 

 これらのデータを用いて、個別不動産の様々な特性と不動産価格の関係を統計的手法で解析した上で、築年数、最寄り駅からの徒歩距離(分)、東京駅からの直線距離(キロメートル)という3つの要素と不動産価格の関係を抽出します。


利便性重視の傾向がはっきり見えるマンション

 次のグラフは、各要素が1単位増えたとき、住宅価格が何%変化するかを示しています。例えば、築年数のグラフで24年前期の戸建て住宅は、築年数が1年増えると価格が1.4パーセント下がることを意味しています。


 まずは戸建て住宅とマンションの関係。マンションの折れ線グラフのほうが下にあります。つまり各要素が1単位増えた時の値下がり率は、マンションの方が大きいということになります。

 

 築年数がより新しく、最寄り駅からの距離は1分でも近く、東京駅からの直線距離も1キロメートルでも近いほうが好まれ、その分価格が高くなりやすいということを意味します。

 

 築年数に対する変化率について、マンションの方が値下がりしやすくなっているのは、マンションは土地の持ち分が少なく、価格に占める建物割合が多いことから、築年数の経過とともに価値が下がりやすいという特徴を反映しているからだと思われます。

 

 また、マンションは利便性を買うものといわれている通り、駅近という要素が好まれやすくなります。今回の結果でも、東京駅からの距離が近いほうが好まれやすいという傾向がはっきりと現れていました。

 

多少古くても許容される中古戸建て

次はそれぞれの特徴について見ていきましょう。

 

 戸建て住宅については、最寄り駅からの徒歩分数は22年後期にピークを迎え、距離が遠くなっても価格が下がりにくい時期がありましたが、

 

 最近はもとに戻りつつあります。コロナ禍でリモートワークが定着するのではないかといわれていましたが、思っていたほどリモートワークが定着しなかったことが要因の一つではないかと考えています。


 一方、戸建て住宅の築年数グラフは右肩上がりで、築年数が古くなることに対する許容の度合いが高まっています。

 

 戸建て住宅の性能が高くなっていることや、建築費の高騰などから、既存の建物を活用しようという考え方が強まっていることが背景にありそうです。


 マンションにおける最寄り駅からの徒歩分数に対する変化率は、目立った変化ではありませんが、トレンドとしては弱い右肩上がりとなっていますので、最寄り駅から遠くなっても値下がり率は低下傾向にあります。

 

 おそらく、中古マンション価格が高くなってしまったため、駅から少し離れても仕方ないと考える方が増えたのかもしれません。


 

注目したいのは戸建て住宅の築年数

 

 今回注目したいのは、戸建て住宅の築年数が増えても値下がりしにくくなっているという点です。

 

 このことは、戸建て住宅は20年程度で価値はゼロになるというかつての考え方が薄れつつあるのかもしれないと筆者は感じています。

 耐震基準が変わった2000年6月以降の建物で、メンテナンスが行き届いていれば、より評価は高まるでしょうし、建築費の高騰も相まって、質のよい中古戸建てに対する需要が高まるかもしれません。

 

 建て替えの難しいマンションは、維持管理に注目が集まっていますが、戸建て住宅もそういった考え方になりつつあるのかもしれません。

 

田中歩(たなか・あゆみ)

1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。

 

 
 
 

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