木造高層ビル実現の立役者・CLT。 耐火・耐震性に優れた建材がもたらす可能性
- 5月9日
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本日は、先日の投稿に引き続き、下記の目次の中から③.軽量かつ工期を短縮できる建材として注目、④.断熱性と調湿機能で使用者が実感できるメリットも、⑤.森林資源をあますところなく使えるのがCLTの魅力についてご紹介いたします。
尚、先日公開いたしました記事に記載漏れがございましたので、併せて記載いたします。
ご覧くださいませ。
目次

②.震度6クラスの揺れでも倒壊しない
耐震性について不安視する声も多い。しかし、鉄骨、鉄筋コンクリート造と比べた場合、むしろ倒壊のリスクは木造のほうが低い。
「CLTで作った木造5階建ての建物に振動を与える実験をしました。阪神淡路大震災の観測波よりも大きな力を加えても倒壊しないことが確認されています。建築物の耐震性を決定づけるのは部材の組み合わせや構造体の設計によるところが大きいといわれています。
単に木造だから、鉄骨造、鉄筋コンクリート造だから、というだけでは測れないものなのです。また、地震の揺れは建物の重さが大きく関係しています。
重いものほど揺れの力を受けるため、鉄骨造、鉄筋コンクリート造よりも軽い木造は、揺れに対してリスクが低いともいえます」(小玉さん)。
木造建築の場合、耐力壁が多いほど建物全体の耐震性が高くなる。軽量でありながら高い強度を持ち耐力壁としても機能するCLTは、耐震性が重視される木造高層建築には欠かせない素材となっている。
③.軽量かつ工期を短縮できる建材として注目
高層ビルのような大きな建物を作る場合、CLTはコスパがいいというのもメリットのひとつだ。
「CLTは鉄筋コンクリートに比べて重量が約1/5と非常に軽量です。そのため、鉄筋コンクリート造の3階建てと同じ重量で、CLTなら5階建ての建物を建てることが可能です。つまり、同じ階数の建物を建設する場合、鉄筋コンクリート造よりも材料や施工のコストを大幅に削減できるというメリットがあります」と小玉さん。
さらに、工期の面でもメリットがあるという。
「例えば、コンクリートは固まるまでに養生期間が必要ですが、CLTにはそのような工程が必要ありません。そのため工期を短縮でき、人件費を抑えることが可能です。また、建物が早く完成することで、入居や利用を早期に開始できるという利点もあります」(小玉さん)。
④.断熱性と調湿機能で使用者が実感できるメリットも
建築する側にとってのメリット以外に、利用する側の私たちが感じられるメリットもちゃんとある。その1つがCLTの持つ高い断熱性だ。
「木材は外気温に影響されにくく、一定の温度を保つ性質を持っています。例えば、木の棒をもって端から燃やしたとして、反対側を持っている手はすぐには熱さを感じませんよね。一方で、鉄の場合は、熱伝導率が高いのですぐに反対側まで熱くなっていきます。
CLTの場合、厚みがあるのでそれだけ温度を伝えにくいという特性があります。建物に使えば、外気温に左右されにくくなり、木の調湿機能により快適な室内空間がつくれます」と小玉さん。
加えて、自由度の高いデザインが可能という点にも注目が集まっている。
木肌をいかした仕上げ材としても使用できるため、木ならではの温もりや柔らかな質感によって癒しと心地よさを与えてくれる。
また、CLTの構造特性を生かして、大きくせり出したバルコニーや大屋根、開放感のある天井高を実現できる点もCLTの得意とするところだ。
⑤.森林資源をあますところなく使えるのがCLTの魅力
CLTなどの木材はCO2の固定化という面でも力を発揮する。
木は大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素として内部に蓄えるとともに光合成によって酸素を放出。
さらに、伐採された後も木材に蓄えられた炭素はそのまま貯蔵され続ける。
木造住宅は鉄骨や鉄筋コンクリート住宅と比べると約4倍もの炭素を貯蔵し続ける。現在、CO₂排出量の約1/3が建築関連から発生していると言われる中、建築物に木材を活用することは、世界がCO₂削減を目指す上で大きな貢献となる。
また、CLTの活用は国内の森林資源の活用という大きなミッションへの切り札としても注目されている。
「日本は森林大国にもかかわらず、他国と比べると木造率が低いのが現状。自国の資源をうまく使えていない。国産材を有効活用するためには間伐材や曲がったりゆがんだりしたB材、製造の端材などの活用も重要になってきます。柱や梁などの建材としては使えないものでも、3cmの厚みさえ確保できればCLT用の木材として活用できます。高効率で国産材を活用できるとして、国もCLTに力を入れていこうという流れになっています」
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