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能登半島地震、支援策まとまる 人口減時代の復興探る  

  • 1月17日
  • 読了時間: 4分

 能登半島地震の復興が動き出す。多くの被災者がなお避難所暮らしを強いられる中、政府は生活再建やインフラ復旧の政策をまとめる。過去の災害では巨額の公費が地域再生に直結しなかった例もある。人口減時代の地震大国・日本で復興のあり方を探る。


 能登半島地震を巡る政府の被災地支援のパッケージが25日、公表される。①生活再建②中小、農林業、観光業など生業再建③インフラなどの災害復旧――の3つが柱となる見通しだ。


 生活再建に向けて被災者の自己負担ゼロで家屋の解体を進める。ホテルなどでの「2次避難」を促すため、利用上限額を1人あたり1泊7000円から1万円に引き上げる。


 中小企業を対象に工場や店舗、設備などの復旧費用を補助する。1件あたり最大15億円で調整している。観光業支援として北陸への旅行者に割引制度「北陸応援割」も設ける。


 能登半島地震の被害の全容は明らかになっていないが、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、23日までに判明した住宅被害を織り込み、暫定的な被害額を2兆625億円と推計した。


 政府の試算と単純比較できないが、東日本大震災(16.9兆円)や阪神大震災(9.6兆円)に次ぐ規模となる。


 過去の大震災で国は巨額の予算を組み、復興を後押ししてきた。しかし、すべてが有効に使われたとは言い難い。


 2011年の東日本大震災後に計4600億円以上を投じた「土地区画整理事業」。津波で被災した土地をかさ上げし宅地や道路を整備したが、大規模な工事に時間がかかるうちに多くの人が故郷を離れた。


 国土交通省の調べでは、21市町村で28%に当たる282ヘクタール、東京ドーム60個分の土地が未利用で、住民ニーズと施策のズレが浮き彫りになった。


 「元通り」にした地域も人口減が止まらない。阪神大震災で甚大な被害を受けた神戸市長田区の人口集中地区は10〜20年の10年間で約7%減少。


 東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市や石巻市も同期間にそれぞれ71%、15%と大幅に減った。


 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、70年に日本の人口は8700万人まで減る。災害前のにぎわいを前提に復興を進めるべきか。過去の教訓を踏まえてどう将来像を描くかが問われる。


 災害時は国や自治体による「公助」に加え、近隣で助け合う「共助」、被災当事者の「自助」も欠かせないが、平穏な暮らしを奪われた被災者にどこまで負担を求めるかは難しい。


 私有財産である個人の住宅再建に公費を投入すべきか。1995年の阪神大震災後に議論が浮上した。


 98年に成立した被災者生活再建支援法は当初、住宅全壊世帯の「家財道具調達」に最大100万円を補助し、住宅再建は対象外だったが、使い勝手が悪いとの批判から、2007年の法改正で使途制限を廃止した。


 補助枠も現在は最大300万円に拡大。4万棟超の建物被害が確認された能登半島地震でも石川県全域が適用対象となり、公費が支給される。


 公助強化の仕組みとして、東日本大震災では国民が一様に財源を負担する「復興特別所得税」が設けられたが、納税者が減り、社会保障費がかさむ時代に公費頼みは限界がある。


 復興に詳しい常葉大の重川希志依名誉教授(都市防災)は「住宅再建は地域の復興につながるという意味で公益性がある」とした上で「公助を手厚くすることは耐震化などの備えを阻害する面もある。まずは地震保険加入など自助をどう広げるかを考えるべきだ」と話す。


 米国では05年の大型ハリケーン「カトリーナ」でニューオーリンズ市の住宅約14万戸が被害を受けた際、再建に多くのボランティアが活動した。


 当時の米ルイジアナ州知事が民間から資金を集めて設立した財団が約1万戸の住宅を再建・提供するなど、寄付文化とも通底する「共助」の仕組みが注目された。


「災害列島」と呼ばれる日本。今後も大規模災害は避けられない。


 想定される南海トラフ地震による経済被害額について、国は建物被害を中心に最悪220兆円と推計する。東日本大震災の10倍以上だ。


 兵庫県立大の井上寛康教授はさらに地震が2回に分かれて起きる最悪のケースでサプライチェーン(供給網)のシミュレーションをしたところ、発生から1年間で失われるGDPの総額は134兆円に上ると試算する。


 「戦略的な備蓄や代替先の確保など、国や企業による事前の備えで供給網への打撃を抑え、経済被害を軽減できれば復興の負担も軽くなる」と訴える。



(蓑輪星使、金子冴月、秋山裕之、田辺アリンソヴグラン)

 

 
 
 

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