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FRIENDSHIP フレンドシップ 友情のためにすることは体にも心にもいい

  • 2024年11月12日
  • 読了時間: 11分

Original Title :PLATONIC:How the Science of Attachment Can Help You Make-and Keep-Friends 



発行日

2024年7月22日


著者紹介

マリサ・G・フランコ

 心理学者、フレンドシップ専門家。メリーランド大学でカウンセリング心理学の博士号を取得。現在、同大学で教授として勤務するかたわら、心理学に特化したメディアPsychology Today(サイコロジートゥデイ)に寄稿している。また、心理学者としてNew York Times紙などへのメディア出演や、全米の企業や大学、非営利団体での講演なども行っている。


概要

 友情は心身の健康に多大な影響を与える! そう語る心理学者が、最新の研究成果をもとに、人生を豊かにする友情の力を解き明かす。友達を持つことは「最強のうつ予防策」「死亡リスクが45%低減する」「恋人と過ごすより大きな幸せにつながる」…。大人になってから友達をつくる方法など、良き人間関係を築くヒントを提供する。


要約


友情で人生が変わる理由

 私たちは「友情」が持つパワーに早く気づくべきである。友情の持つ影響力は軽視されているものの、実は非常に深遠だ。


 古代ギリシア人は、友情を人類繁栄へのカギだとして、哲学的に考察していた。例えば、アリストテレスは『ニコマコス倫理学』の中で、友情がなければ「誰も生きようとはしない」と主張する。


最強のうつ予防策は友情

 友情が持つパワーは、科学によって証明されてもいる。科学者は、うつに影響する106の要素のうち、信頼できる友達を持つことが、最強のうつ予防策となることを発見した。


 友情が持つ癒しの力は、体の健康にまで及ぶ。ある研究によると、エクササイズは死亡リスクを23~30%、食生活は最大24%下げるが、大きな交流ネットワークを持っていると死亡リスクが45%も低減することがわかっている。


家族とは種類の違う関係が持てる

 人とのつながりから得られる恩恵の多くは、もちろん家族や配偶者など、友達以外の親しい関係を通じて得られるものだ。しかし、友情には友情ならではの利点がある。


 友達は親と違い、私たちに自分の期待や欲求を叶えてほしいとは思っていない。配偶者と違い、その人のすべてになったり、欠けた部分を補う存在になったりという、大きな期待を背負わされることもない。


退職後の生活を計画する必要もなければ、風呂掃除を誰がするかを決める必要もなく、気兼ねなく、喜びを味わうための場にできる。


 ある研究では、友達と一緒に過ごす方が、配偶者や子どもと一緒に過ごすよりも大きな幸せにつながることがわかった。理由は、友達と一緒だと、ボウリングをしたり、イベントに出かけたりと楽しく過ごせる一方で、配偶者や子どもと一緒にする行動は、食器を洗ったり、歯磨きをするよう促したりなど、日常的なものになるためだ。


 私たちは、応援してくれ、理解してくれ、一緒に喜んでくれる人たちを、友達として自分で選べる。友情というものを通じて、私たちは人生で最も肯定的で、安全で、神聖な人間関係を自分で選ぶことができるのだ。


誰かと親しくなる時にはその人物を取り込んでいる

 心理学の分野に「自己拡張理論」というものがある。これは、人が精神的に満たされるには、アイデンティティを常に拡張する必要があるという理論だ。そして、その拡張する手段の基本は人間関係である。


 人は誰かと親しくなると、自己意識の中にその人物を取り込む。この現象を「自己への他者の包含」と呼ぶ。例えば、友達がキリマンジャロに登ると、まるで自分が登ったかのように感じ、そのため自分が登る心の準備もできたと感じる。


 私たちが友達に共感を抱くのは、ある意味「自己への他者の包含」のせいでもある。まるで、自分自身に共感を抱いているように感じるのだ。


 この「自己への他者の包含」の概念を提唱したアーサー・アーロン教授は、「結局のところ私たちは、ああなりたい、という人と付き合います。自分の人となりを高める手段なのです」と言う。


 友情に関する研究者リディア・デンワースも、次のように語っている。「人は、競争や適者生存を常に考えていますが、本当のところ、最もフレンドリーな者が生き残ります。幸せに長生きするカギは、友情なのです」。


 哲学者ミシェル・ド・モンテーニュはその著書『友情について』の中で、友情を「スピリチュアル」と表現し、「実践することで魂がより洗練されたものに成長する」人間関係であるとしている。


スーパーフレンドと愛着スタイル

 友達をつくるということは、単なる運ではない。友達をつくり維持できるか否かは、自分自身にかかっている。自分でも気づかない些細な物事をどう選ぶかが、友情の運命を決めているのだ。


 それは一体、どういうことか?


友達づくりの達人、「スーパーフレンド」

 オムリ・ギラスは、イスラエルで暮らしていた子ども時代、友達をつくるのに苦労した経験を持つ。長じて彼は、心理学の博士研究員としてアメリカに渡り、「愛着理論」について研究した。この愛着理論は、誰が友達づくりと維持の達人かを見極めるのに役立ったという。友達をつくり維持する達人を、彼は「スーパーフレンド」と呼ぶ。


 スーパーフレンドは、人間関係をはじめ、人生のあらゆる面が活気にあふれている。つまり他者と関わる能力は友情を左右するだけでなく、行動すべてに大きく影響するのだ。


 また、スーパーフレンドはメンタルヘルスも良好である。新しいアイデアにオープンで、偏見も持ちにくく、同僚からも肯定的に見られ、人生の困難もうまく乗り切れる傾向にある。


3つの愛着スタイル

 スーパーフレンドならではの特徴とは何か?


 それは、心の安定である。愛着理論によると、人間のパターンは、次の3つの愛着スタイルに大きく分けられる。スーパーフレンドのような人は、「安定型」である。


①安定型:自分は愛される価値があり、他者は自分が愛するだけの信頼に値すると考えている。この信念はあらゆる人間関係に適用される。「疑わしきは罰せず」で人を受けとめ、必要なものは臆せず人に頼み、他人を支援し、自分は人に好かれていると考える。このため、親密な人間関係を築くことができる。


②不安型:自分は人に見捨てられると思い込んでいる。そのため、人にしがみつくような行動を取ったり、過剰に自己犠牲的に人の世話をしたり、すぐに親密な関係になったりする。


③回避型:②と同様、人から見捨てられることを恐れる。この型の人は見捨てられないようしがみつく代わりに、人と距離をおく。親密な関係になると傷つく可能性があるため、人を押しやり、早い段階で人間関係を終わらせる。


 私たちは自分と養育者との初期の関係を土台として、愛着スタイルを発達させる。養育者が温かく認めてくれるような人であれば、安定型になる。そうではなく、対応が冷たく拒絶するような養育者であれば、不安型か回避型の不安定な愛着スタイルを発達させる。


 とはいえ、愛着はすべて両親の落ち度によるものというわけではない。ニューヨーク州立大学のエヴェレット・ウォーターズ教授は、一般的に、人間関係にどのようなスタイルでいるかが確立されるのは、幼児期に養育者相手に経験した愛着であることに間違いはないが、スタイルは他の人間関係の中で進化する可能性が高く、親子関係は単に出発点にすぎない、と言う。


 新しい人間関係1つ1つが、自分の愛着スタイルを変える可能性を秘めているのである。


友達は自然にできるものではない

 現代では、私たちは孤独を、人間の必然的なあり方として語る傾向がある。だが、そんなことはない。1800年代以前は、今の私たちが知る「孤独」という状態を意味する言葉さえ存在しなかった。「lonely(孤独な)」という言葉は、「単独でいる」という状態を描写するものであり、その痛みを指すものではなかった。


 その後産業化の波が訪れ、工場で働く親が家を離れたことで、地域社会の絆は薄くなり、核家族が人々の生活の中心となった。人は仕事のために1人で暮らすようになり、これが孤独を拡大した。


 愛着理論の生みの親の1人であるジョン・ボウルビィは、こう述べている。「知っている人と長期的な人間関係を持つのであれば、助け合いは理にかなっている。なぜなら、今日助けるから5年後に助けてくれ、となるからだ。しかしもし5年後にあなたはここにおらず、地域社会も変化し続けるなら、当然ながら助け合いはできない」。


仕事より友達を優先させることはできない社会

 私たちは近年、仕事や便利さのためにますます地域社会を犠牲にするようになった。食料品店の店員とのおしゃべりが、宅配用ダンボール箱に取って代わった社会。空港へ迎えに来てくれる友達が、ウーバーの運転手に取って代わった社会だ。


 人類学者のセバスチャン・ユンガーは言う。


 「私たちの社会は、反人間的だ。(中略)人間として私たちが基本的に抱く欲求は、他者のそばにいることだが、社会はそれを許さない」


 では、その結果どうなったか? 2013年に行われた合計17万7653人を対象にした研究の分析から、友人のネットワークはここ35年間で縮小の一途をたどっていることがわかった。2000年代を生きた人は、1980年代前半を生きた人と比べ友達の数が平均で4人少ない。


 別の分析では、友達がいない人の数は、1990年と比べて2021年は4倍になった。男性にとって状況はより深刻で、友達がいない人の数は、1990年と比べて2021年は5倍に達している。


 人類史上、最も友達づくりが難しい時代に、私たちは生きている。


友達づくりには努力が必要

 大人になってから友達をつくるには、自分から働きかける必要がある。一言で言えば、何度も繰り返し手を差し伸べるというプロセスだ。いいなと思った人に出会ったら、チャンスをとらえて相手の電話番号を聞く、ということである。


 「友情は自然と湧いてくるものだ」と思い込むのは、友達づくりの妨げとなる。そう思っていると、意図的に友達をつくろうとしなくなるからだ。


 カナダのブランドン大学の心理学者らが調査したところ、「友達づくりは運による」と考えていた人は5年後、前より孤独になっていた。一方で「友達づくりには努力が必要だ」と考えていた人は、そこまで孤独ではなかった。なぜか?


 努力が必要だと考える人は、友達に会いに行ったり教会に行ったりするなど、社会的な活動を多くする傾向にあった。そしてこうした社会的な活動に関わることで、友達ができたのである。


「内的な統制の所在」を育てる

 友達をつくるには、自分から働きかけなければならない。とはいえ嬉しいのは、どのように働きかけるかは自分で選べるということだ。


 働きかけをする際に、受け身の姿勢や無力感を払拭するには、「内的な統制の所在」と呼ばれるものを育てることが大切だ。


 これは、簡単にいうと「目標を達成するための責任は自分にあると思う」ことを意味する。こういう人は、内的統制型と呼ばれる。このタイプの人が友達をつくりたい時は、ハイキングのグループに加わり、参加者に自己紹介をするだろう。


 挨拶などのちょっとした行動は、人生にそこまで大きく影響しないと人は思う。でも、実際はするのだ。たった1回の挨拶が、孤独でいるか、親友を見つけるかの違いをつくる可能性もある。


 「友達とは、自ら動いた時にできるものだ」と考えれば、内的な統制の所在を発達させることができる。もっと距離を縮めようとすれば近づける、と信じるようにもなる。


人に好かれていると思い込む

 恋人や夫婦を対象にした調査で、自分をポジティブに感じられるほど、自分は人から好かれていると考える傾向が高まることが示唆された。そして、自分には価値がないと感じるほど、人から好かれている度合いを低く見積もりがちになる。


 この調査で明らかになったのは、恋人や配偶者から自分がどう見られていると思うかは、相手が実際にどう見ているかというより、自分が自分をどう見ているかを反映しているということだ。この調査から、「人からこう思われているだろう」という想像は、事実ではないことがわかる。


 人間は、人の心を読むのがとても下手である。新しい人と出会うと、証拠もなしに「相手は私と仲良くなりたいだなんて思わないだろうな」と考える。こんな決めつけをするのは、「自分は退屈な人間だ」と思っているからだ。


 自分を愛していれば、この世の人付き合いは自分の思い通りになると感じ、愛していなければ、この世は残酷で非情だと感じる。心の中の世界観によって、そこでの経験が異なるのである。


 カナダのウォータールー大学のスティンソン教授は、次のように述べている。


 「人は自分が受容されると予測すれば行動が温かくなり、その結果、人に受け入れられるようになる。拒絶されると予測すれば行動が冷たくなり、その結果、受け入れられなくなる」


まとめ

友情が心身の健康に大きな影響を与えることは、科学的に証明されている。例えば、信頼できる友達を持つことは、最強のうつ予防策となる。また、大きな交流ネットワークを持っている人は、死亡リスクが45%も低減する。


●友達をつくり、維持する達人を「スーパーフレンド」という。彼らは活気に満ち、メンタルヘルスも良好だ。同僚からは肯定的に見られ、人生の困難もうまく乗り切れる傾向にある。


●人間の「愛着スタイル」のパターンは、次の3つに分けられる。


①安定型

自分は愛される価値があり、他者は自分が愛するだけの信頼に値すると考えている。そしてこの信念をあらゆる人間関係に適用し、親密な関係を築くことができる。例えば、上述のスーパーフレンドは、この安定型である。


②不安型

自分は人に見捨てられると思い込んでいる。そのため、人にしがみつくような行動を取ったりする。


③回避型

②と同様、人から見捨てられることを恐れる。親密な人間関係を築こうとせず、人と距離をおこうとする。


●大人になってから友達をつくるには、自分から働きかける必要がある。すなわち、いいなと思える人に出会ったら、チャンスをとらえて相手の電話番号を聞く、ということである。


●友達をつくる秘訣は、自分は「人に好かれている」と思い込むことである。人は、自分が「受容される」と予測すれば行動が温かくなり、その結果、人に受け入れられるようになる。一方、「拒絶される」と予測すれば行動が冷たくなり、その結果、人から受け入れられなくなる。


投稿責任 社長

 
 
 

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