木造高層ビル実現の立役者・CLT。 耐火・耐震性に優れた建材がもたらす可能性
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本日は、先日の投稿に引き続き、下記の目次の中から⑥.コスト削減、認知度向上がネック、⑦.暮らしに新たな豊かさをもたらすCLTの可能性についてご紹介いたします。
ご覧くださいませ。
目次

⑥.コスト削減、認知度向上がネック
CLTにはさまざまなメリットがある一方で、デメリットとして挙げられるのは運送コストの問題だ。
国内でCLTを製造している工場は9か所。全国各地で伐り出した木材をそのいずれかの工場に運んで加工している。当然、輸送費がかさみ単価が上がる。
「現在のCLTの価格は、1m3あたり10万円という相場になっています。7万円くらいにならないと一般的なものとして使用するのはなかなか難しい」と小玉さんは話す。
規格品を製造してストックすることで、現在主流の注文生産に比べて費用を抑え、効率化を図る試みが進められているそうだ。規格化によって納期が短縮されることで全体的なコストカットも期待されている。
全国的な普及が今一歩進まないもう一つの理由が“地産地消”。小玉さんは、“地産地消”のジレンマについてこう指摘する。
「“地産地消”を推進することで地域経済を活性化しようとする取組みが多いですが、地元の木材をCLT加工工場に送るには輸送費がかさみます。では、地元にCLT工場を設立すればいいのではという意見もありますが、これには莫大な費用がかかります。
さらに、一部の自治体によっては伐採から加工までを地元で一貫して行わないと補助金が下りないというケースもあり、自治体ごとの方針の違いが全国的な普及を難しくしている現状です」
地産地消のジレンマを克服し、持続可能な形でCLTを普及させるためには、コスト削減、認知度向上が不可欠。
国ではCLTを活用した建築物への支援制度を設け、補助金の設計や運用を軸に地域産業の自立や持続可能性を長期的に考慮していく方針だという。
⑦.暮らしに新たな豊かさをもたらすCLTの可能性
CLTが日本で使われるようになってから約10年。竣工数は年々右肩上がりに増え続け、2023年は1,300棟ほどがCLTを使って建てられた。そのほとんどは賃貸住宅やオフィルビル、商業ビルの建築だ。
一般住宅への使用も少しずつ増えてはいるものの、住宅としての普及はまだ難しいのではないかというのが小玉さんの見立て。
「例えば、CLTを使って一般的な2階建て住宅を建てる場合、在来工法と比較してコストが約1.5倍かかるとされています。鉄筋コンクリートで作るのと同じくらいの金額になるイメージです。そのため、現時点では建売住宅としての普及はまだ難しいのが現状。
しかし一方で、付加価値の高いデザイン性を重視した住宅を求める一定のニーズがあるのも事実です。こうした需要を活かしつつ、CLTの認知度をさらに高めていくことが今後の課題の一つと考えられます」。
木造建築がもたらす未来と可能性に期待
木がもつ環境性能にも年々注目が高まっている。木造建築が増えていくことで、私たちの暮らしにどのような変化があるか小玉さんに伺ったところ
「木質空間にはリラックス効果があるだけでなく、業務効率があがったり人間関係が円滑に進んだり、集中力があがるというデータもあります。建物の規模にかかわらず、木でできた空間が増えることによって、人々の生活や仕事の質が向上し、心身の健康に寄与する効果も期待できるでしょう。
今後もオフィスや学校、医療施設など、幅広い場面で活用されることが予想されます。木材が持つ癒しや環境性能を積極的に取り入れることで、人々の暮らしに新たな価値を提供できるのではないでしょうか」と話してくれた。
日本はもともと木造建築が主流の国であり、法隆寺に代表されるように、木を活用した建物は適切な手入れをすることで1000年以上も維持可能なエコな建築形式。
今回紹介した“都市木造”などの高層木造建築は、まだ始まったばかり。耐久性や管理の仕組み、エンドユーザーへのメリットなど未知な部分が多い。今後、時間をかけて、評価が進んでいくと思われる。
CLTの普及だけで林業の活性化すべてに結び付くわけではないが、木造建築の伝統を新しい技術で次世代へと引き継いでいくCLTの可能性について今後も注目していきたい。
取材協力:一般社団法人日本CLT協会
住まいと暮らしのライター
古道具や古着、古民家など“お古”に惹かれる愛知県在住ライター。
雑誌、Webを中心に建築やリノベーション関連のほか、まちづくり、ものづくり、グルメ、音楽、著名人インタビューなど多ジャンルの取材・執筆を手がける。
中古住宅で“お古”の家具をDIYしながら暮らす。
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