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中古住宅、購入申し込み後にキャンセルしたくなるわけは

  • 2024年2月16日
  • 読了時間: 8分




中古住宅を購入する際、現地を見学してみて気に入った物件があれば「購入申込書」に購入希望金額などを記載し署名捺印(なついん)をします。これによって売り主との売買契約交渉に入り、双方が合意する条件になれば売買契約を結んでめでたく購入に至るということになります。

ところが、購入申込書を提出してから1週間ほど経過したところで、購入予定者からキャンセルの連絡を受けることがあります。

せっかく気に入った物件が見つかったのに、いざ契約交渉の直前になって、購入をやめる事態になってしまうのです。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

「本当にこの家でいいのか?」

購入申込書は、その物件を買うという意思を明確に売り主に示す書類です。売買契約とは違い、サインして捺印しても法的な効力はありませんので、キャンセルしても問題はありません。購入申込金を払った場合は返金されます。

しかし、キャンセルするには少なからずエネルギーが要ります。契約のための準備に取り掛かっている売り主と不動産業者に迷惑がかかってしまうからです。売り主が広告を出している場合は他の人への案内を止めることもあり、売り主にとっては他の購入希望者を見つける販売期間を奪われることにもなります。

キャンセルを繰り返すと「信頼されない顧客」と見なされ、本気で買いたい物件が出てきても手続きがなかなか進まない事態にもなり得ます。

キャンセルの理由は様々ですが「本当にこの物件でよいのか不安になった」「配偶者が購入に反対している」「住宅取得のための資金を一部援助してくれる親が反対している」などと、購入の話が具体化して改めて家族の思いがばらばらだったことに気づくケースもあります。

なぜ今か、どんな暮らしをしたいのか

「キャンセルしたいがどうしたらよいか」と筆者に相談に来る人の話を聞くと、一つの共通点があります。それは「なぜ今、購入するのか?」「どんな暮らしがしたいのか?」という住まい購入の目的が定まっていないということです。

そして、その考えを共有すべき人と共有していないのです。

住まい購入の目的は人それぞれですし、模範解答があるというものではありません。しかし、これがほとんど固まっていないのに、不動産営業担当者にセールスされるがままに、ついつい判子を押してしまうというのは、後悔することになりかねません。

家族で住まい探しの考えを整理し共有

では、どうすればよいでしょうか。筆者のお客様に、とてもよいやり方をしていたご夫婦がいらっしゃいますので、そのやり方をご紹介しましょう。

それは、物件見学をするたびに「なぜ今、購入するのか」「そこでどんな暮らしをしたいか」について整理するというものです。

彼らは、毎週の土日に物件見学を1カ月ほど続ける中で、

現在の暮らしの問題点は何か、問題点を改善できる立地や建物の特性はどんな条件か、資金計画など経済面での実現可能性、子育ての見通し、買い替えのタイミング――といった点について考えながら、次のような整理をしていました。

・現状は、利便性はとても良いものの古い鉄骨賃貸アパートで暮らしている

・今の住まいの悩みは、夏は暑いし冬は寒く、結露によるカビが出ること。近いうちに子供を作りたいと思っているので、出来るかぎり早いうちに断熱性が今よりよい環境の住宅に住みたい

・現在の家賃の1.5倍程度の金額は住宅費として支出可能なので、同額程度の元利払いとなる固定金利の住宅ローンを組んで、住宅を取得してもよい

・新しい家に求める条件は、子供ができても共働きを続ける予定であるため、保育施設や学童制度が充実した立地、かつ通勤に便利な立地がよい

・もう一つの条件は、子供が中学に入学するころには住み替える可能性もあるので、将来も売りやすい物件がよい

彼らは1カ月間の物件見学の中で「どんな暮らしをしたいか?」についても、2人で見学するたびに、そこで暮らしている自分たち家族の姿を想像しながら話し合ったそうです。平日、休日、朝、晩、5年後、10年後の暮らしぶりまで想像していたそうです。「漠然と物件を見学するのではなく、そこで暮らしている自分たちの姿を想像できるかが重要だった」と言っていました。

不動産営業担当者と積極的に会話を

これほど具体的に考え抜いて、新しい家への思いを家族で共有していれば、購入申し込み後にモヤモヤしてキャンセルするようなことにはならないでしょう。結果として、希望する物件をスムーズに購入できます。

不動産営業担当者の仕事は、買い主に寄り添いながら、「なぜ今、購入するのか?」「どんな暮らしがしたいのか?」を買い主から引き出すことだと言うプロフェッショナルもいます。漠然と物件見学をするだけでなく、不動産営業担当者と積極的に会話しながら物件見学をしてみるとよいと思います。

田中歩(たなか・あゆみ)1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。



家探しは現場が大切 不動産「オトリ広告」に注意

家を探すときはまずウェブサイトで物件を検索し、気に入った物件があれば不動産会社に問い合わせて見学するのが一般的です。一見、簡単そうな物件探しですが、注意すべき点がいくつかあります。今回は、不動産広告の注意点と物件見学に関する注意点についてお話します。

「割安」にみえる広告の裏事情

ウェブサイトでの物件検索で注意したいことの一つに「オトリ広告」があります。

オトリ広告とは、売るつもりのない物件、すでに売却済みの物件、実際にありもしない物件などをサイトに掲載するなどして、お客を集めることを目的とした広告を言います。

これは、広告につられて不動産会社に問い合わせしたお客に「この物件は最近売れてしまいましたので、別のよい物件をご紹介しますよ」などと言ってお客との接点をつくっていこうという狙いです。

オトリ広告は禁止されているのですが、全くないというわけではないのです。オトリ広告でお客を釣るような不動産会社は、強引なセールスを行うなど、必ずしも質がよいとは言えない可能性が高いため、極力接点を持たないほうがよいでしょう。

オトリ広告なので、物件価格は割安にみえるものが多いようです。ただ、よく考えてみましょう。仮に、特段の理由がないのに相場より割安な物件があるとすれば、その物件の存在を最初に知ることができる不動産会社が自分で買い取って、市場価格で転売すれば確実にもうかりますので、市場に流通する可能性はまずありません。

ですから、市場には本来、割安物件、格安物件は存在しないのです。明らかに安いと思われる物件は、疑ってかかったほうがよいでしょう。

物件の見学で見落とせない3つのポイント

気に入った物件に出会ったら、いよいよ現地の見学です。物件見学というと、建物の室内や設備、建物そのものに不具合がないかどうかをチェックすることがメインになりがちです。もちろん建物の状態を確認することはとても大切ですが、これ以外にも必ず確認していただきたい3つのポイントがあります。

1つ目は、公共交通機関を使って現地に行くこと。

複数の物件を見学する場合、不動産業者の手配した自動車に乗って物件を巡ることが多いのですが、この方法だとその物件が立地している周辺環境を把握することができないのです。

最寄り駅から物件までの街並みが確認できないと、交通が激しく危ない場所、人気がなくて夜は危なそうな場所などのチェックができません。

また、実際に歩いてみると、アップダウンがあったり、信号待ちが思った以上に長いなどといった広告ではわからない実情が見えてくることもあります。

あるいは「ひったくりに注意」などといった通行人に注意を喚起する看板がある場合、そういった事件が発生した通りである可能性もあります。こうした細かな点は、自分の足で歩かないと見えてこないものです。

2つ目は、2回以上、現地へ行くこと。

実際に複数回、物件周辺を巡ってみたという方は多くないかもしれませんが、そこで暮らすことを考えるなら、平日と休日、時間帯によって、その街がどのように姿を変えるのかを確認しておいたほうがよいでしょう。

例えば、夜の帰宅時の道のりが不安なら、夜に最寄り駅から物件まで歩いてみましょう。お子様の通学路が気になるのであれば、平日の朝と晩、実際に歩いてみましょう。物件の近所に保育園がある、道場があるなどの場合、一定の時間帯は音が気になるかもしれませんから、実際に聞こえる時間帯に行ってみるのも一案です。

3つ目は「現場取材」も有効であること。

気になる物件の近所に暮らしている方に声をかけてみるのはとても有効です。「今度、このかいわいに引っ越したいと考えているのですが、どんな街ですか?」とストレートに聞いてみると、きちんと答えてくださる方は多いものです。

地元商店街でちょっと買い物したついでに街の様子を聞くというのは筆者がよく使う方法です。また、スーパーの食材売り場を巡ると、商品の種類や質が地域によって異なるため、そのエリアに暮らす方々の暮らしぶりが見えてくることもあります。

もちろん、悪い点だけでなく、おいしいと評判のお店などの情報も手に入ることがあります。

暑さがようやく収まり、歩きやすい気候になりました。物件探しを始める方もいらっしゃると思います。広告に注意しながら、自分の足で現地を見て、自分の耳で聞いてみるということは、物件探しだけでなく街の探索という意味でも楽しいと思います。

田中歩(たなか・あゆみ)




 
 
 

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