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東急主導の渋谷再開発、最終施設が着工 2兆円の投資効果に遅れ       

  • 7月10日
  • 読了時間: 4分
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 2002年から続く渋谷駅周辺の再開発計画が最終盤に入った。中央部にある複合施設「渋谷スクランブルスクエア」の中央棟・西棟が5月に着工した。主導する東急にとっては投資額2兆円超の大型開発に区切りがつく。既存施設の集客増が業績を押し上げる一方、建設中の施設の計画遅れで、新規開業が当面ないことが課題となる。


ビジネスTODAY


 「これからの100年も渋谷とまっすぐ向き合い、まちづくりを続けていく」。東急の渋谷開発事業部の坂井洋一郎事業部長は3日、渋谷再開発の経過説明会でこう強調した。


 建設が始まった中央棟と西棟は31年度の完成を予定する。主に商業施設が入居し、延べ床面積は約9万5000平方メートル。


 完成済みの東棟を含めた1フロアあたりの売り場面積は約6000平方メートルと首都圏最大級の広さとなる。


歩行者デッキで回遊性向上


 足元で渋谷区の貸店舗空室率は0%(CBRE調べ、25年5月時点)と、商業施設の供給余地はまだまだありそうだ。篠田なつき総括課長は「インバウンド(訪日外国人)だけではなく、働く人たちにも過ごしてもらえるような商業のボリュームが求められている」と話す。


 同時に、JR渋谷駅をまたぐように橋を架けて歩行者デッキを設ける。東西に動線ができ、これまで迷路のようだった駅周辺の回遊性が向上することになる。


 渋谷エリア全体の再開発に伴う40年までの累積投資額は2兆円超で、東急の負担額は50%程度。同社は中央棟などが完成することで、渋谷駅周辺の再開発が一つの節目になると位置づけている。


渋谷の従業員、10年で3割増


 渋谷の再開発は00年代に入ったころから検討が始まった。東京メトロ副都心線と東急東横線の相互直通運転が決まり、それに伴って東横線渋谷駅が地下に移ることになった。地上にできた駅跡地の活用が必要になり、02年に大規模再開発の議論が一気に進んだ。


 渋谷駅は1885年に現在のJR山手線が開通後、私鉄各社が乗り入れたことでターミナル駅としての礎を築いた。1934年には東横百貨店がオープン。繁華街として栄え、戦後は73年に開業した渋谷パルコなどが文化の発信拠点へと押し上げ、「渋カジ」や「コギャル」といった若者文化が花開いた。


 ただ「まち」としての課題はつきまとってきた。もともと谷地にあるため、大雨などでは浸水被害が発生しがちだ。鉄道路線や国道246号により、東西南北に街全体が分断されていた。


 今回の再開発ではこうした長年の課題克服も加味された。デッキを設けて回遊性を高めただけでなく、地下に約4000トンの雨水を一時的にためられる施設や、帰宅困難者を受け入れられる体制も整備。12年4月に先陣を切って開業した渋谷ヒカリエは約2500人を収容できるスペースを確保した。


 再開発への着手後、渋谷区で働く従業員数は10年間で33%増え、東京都全体の増加率を上回る。渋谷駅半径2キロ以内の居住人口も7%増加した。グーグルの日本法人やDeNAなど、ITを中心とした企業も集積。


 渋谷区のオフィス空室率は東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の平均より低く、平均賃料も高い。


計画後ずれで利益貢献に時間


 こうした人流の増加は、東急の業績にもつながっている。同社は渋谷再開発の押し上げ効果を明らかにしていないが、25年3月期は増収増益を達成した。24年7月に開いた複合ビル「渋谷アクシュ」は通期で約20億円の営業利益を生み出しているという。


 課題は当面、開業予定の大型施設がないうえ、工期も計画より遅れていることだ。


 東急など3社が共同開発する「渋谷Upper West」は完成が27年から29年にずれた。渋谷スクランブルスクエアも当初は27年度の完成予定だった。26年3月期の純利益は前期比微増の800億円で過去最高を更新する見込みだが、利益貢献度はしばらく低いままとなる。


 トランプ関税に伴う世界経済の停滞懸念やインバウンド需要の動向といったマクロの不確実性も残る。


 東急は収益性の高い渋谷の不動産を軸として賃貸収入をコア事業と位置づけるだけに、持続的に人を呼び込むまちづくりが求められる。



                        投稿責任  社長

 

 

 

 

 


 
 
 

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