木造はここまできた! 木造高層ビルの建設ラッシュ。 都市に森をつくる“都市木造”が当たり前になる時代へ
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目次
本日は、上記の目次の中から④.“都市木造”で森に関心をもつ機会を創造する、⑤.“都市木造”が当たり前になる時代へについてご紹介いたします。

ところで、林業が衰退して山が荒れているといわれて久しいが、どれくらいの人が実感しているだろうか。荒れているといっても林業の問題であって、自分たちの暮らしと結び付けて考えている人は多くないように思う。
「都市部にいる私たちも知らない間に山の恩恵を受けています。水が飲めているのも山のおかげですよね。水源涵養(かんよう)だけでなく、土砂災害の防止、地球環境や生物多様性の保全といった機能のほかにレクリエーション、自然環境の教育の場など、山は多くの役割を担っています。山の近くに暮らす人たちと比べ、都市部の人々はこうした恵みを忘れてしまいがちです。都市に木造ビルをつくることは、山の恩恵を思い起こし、その先にある森林の状況にも多くの人が関心をもつことにもつながると考えています」
温室効果ガスの貯蔵と吸収のサイクルを担う“都市木造”
ここ数年、記録的な猛暑やゲリラ豪雨など不安定な気象が続いている。こうした異常気象の原因となっているのが二酸化炭素などの温室効果ガスだ。この温室効果ガスの排出を控えようという脱炭素の動きは、日々の暮らしのなかで実感している人も多いのではないだろうか。
日本は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すと宣言。排出せざるをえない分は、吸収・除去することで相殺し、“全体としてゼロ”にするという考え方だが、この吸収・除去に大きく貢献するのが木の存在だ。
「木はもとより二酸化炭素を吸収するうえ、伐採後も吸収した二酸化炭素を貯蔵し固定するという働きがあります。木材を大量に使用する“都市木造”は、こうした温室効果ガスの貯蔵と吸収のサイクルに大きく貢献するものでもあります。このことから“都市⽊造”は、森のない都市に第二の森をつくることともいえるのです」
木造住宅は鉄骨や鉄筋コンクリート住宅と比べると約4倍もの炭素を貯蔵し続けるというデータもある(※2)。伐採後に新しい苗木を植えれば、新たに二酸化炭素を吸収する樹木が育つという循環が生まれる。
「環境問題の解決のために木を使わなくてはいけないのはもちろんですが、自分たちの生活が豊かになるためにやってきたことが実は環境問題の解決につながっていた、という流れが理想的。その理想を実現するためにわれわれ専門家らが研究して技術開発を行ってきた結果、鉄骨、鉄筋コンクリートと同等のものがが木造でもつくれるようになりました。ようやく見本が少しずつできてきた、というのが今の状況です。これから数年かけて使っていきながら、管理の方法なども含めて検証・検討を重ねていくことになるでしょう。全部を木造にしなくても、例えばホテルの上層階だけを純木造にするとか、超高層ビルの最上階に豪華な木造のペントハウスをつくるといったコストと付加価値のバランスを考えていく段階になっていきます。木造でも高層ビルがつくれると証明されたわけですから、これからはそれをどう使うのか、新しい木造の価値を創造していく時代がきているといえます」
「なぜ都市に木造ビルを建てる必要があるのか?と聞かれてあまりいい回答が浮かばなかったけれど、最近になってわかったのは “なぜ木造なのか”と聞かれること自体が問題なんだということ。当たり前になっていたら、そんなこと聞かないですよね」と腰原氏。
高層木造ビルが林立する風景が当たり前になったら、どんなまちなみになるのだろう。
そもそも私たち人類のルーツは猿で、森のなかで暮らしてきた。木を見たり触ったりすると心が落ち着くのはDNAにそうした木への郷愁みたいなものが染みついているのかもしれない。腰原氏は「“都市木造は”第2の森林、都市の森林」とも言っていた。都市型の森ができたとき、私たちの暮らしがどう変わっていくのか、未知の可能性に想像が膨らむ。
※1)「令和5年度 建築物における木材の利用の促進に向けた措置の実施状況の取りまとめ」林野庁2024(令和6)年3月26日による。床面積ベースでの数値
※2)「令和元年度 森林・林業白書」林野庁2020(令和2)年6月16日による
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